
こんにちは、土橋陽子です。昨年に続き、今年の秋も東京中がアートとデザインで染まるイベント「DESIGNART TOKYO 2025」で、インスタグラムレポーターとしてお仕事をさせていただきました。開催期間中は、できる限り時間をみつけて、同時期に開催されている展示会場を見て周るようにしています。中でも、今年初登場したイベント「alter.」は今後が楽しみなイベントのひとつ。
今回は、それらの体験から私が感じた“デザインの本質”を、少し短くまとめてお届けします。
街中がデザインのショールームに変わる9日間


DESIGNART TOKYO は、表参道・原宿・渋谷・六本木といった街全体を「点ではなく面」で巡る珍しいデザインフェスティバル。
今年のテーマは 「Brave – 本能美の追求」。
“美しさに向かって正直に進む” という姿勢が、各会場の作品にしっかりと表現されていました。
私は初日に渋谷のメイン会場からスタートし、レポーターとしてカメラに向かってその場の空気をお伝えしながら巡りました。
「デザインは私には関係ない?」誰もが深く関わっています。
イベントを巡っているとよく聞く言葉があります。
「デザインって難しい」「自分には関係ない」
でも私は、こう思っています。
生きている限り、デザインはすべての人の毎日に関わる。
家具、道具、光、音、香り。
私たちは毎日「何か」に触れて生きていて、そのすべては誰かの意思で作られたものです。
だからデザインを知ることは、“自分の心地よさ”を知ることにもつながります。

私がデザイン展を巡る3つの理由
① クリエイターへの尊敬
展示に並ぶ作品は、作り手が「いまの自分」を世界に差し出す勇気の結晶。
その姿勢に、いつも胸を打たれます。



② 自分のモヤモヤが言語化されるから
作品には、その人の思考や葛藤が詰まっています。
見続けるうちに、
「あ、私のモヤモヤってこれだったのかも」
と、自分の中にも小さな答えが見つかる瞬間があるんです。

③ まだ知らない“自分の好き”に出会えるから
初めて触れる質感、予想外のアイデア、思いがけない便利さ。
プロダクトには、私たちが知らなかった“自分の感性”を開いてくれる力があります。
デザイン展は、小さなセレンディピティの連続です。
心をつかまれた作品たち 「思考が垣間見える」 デザイン
今年特に印象的だったのは、「思考が垣間見えるデザイン」。



● カール・ハンセン&サン「Flame 」

デンマーク本社では木のフレームで構成された空間を、
日本のショールームでは“陰影”で表現。
このローカライズの美しさに心をつかまれました。
歩くたびに切り取られる風景は、まるで京都寺院の窓。
日常の景色が額縁の中の絵画のように立ち上がる。
その静謐な瞬間の中に、新作椅子がそっと佇んでいました。


● セイコーウォッチ「からくりの森」
インハウスデザイナーの
「我々にとって1mmはものすごく大きい」
という言葉が忘れられません。
ムーブメントの針先が砂に描く石庭。秒のムーブメントは小さな円を絶えず描いているのがわかりますが、分針や時針のほうは動いているのも分からない、でも確実に動いていて砂にその跡が残されている。次の一周りがそれを消していくさまに、”今”ここに在る喜びを噛み締めました。
別の針先の“ちいさな人間たち”がハイタッチする仕掛け。普段は決して出会わない時計の針同士が、一瞬だけ触れ合う“ときめき”を虫眼鏡で覗く喜び。

精巧さと遊び心が共存する、セイコーらしい展示でした。

● 大蔵山スタジオ
イサム•ノグチが愛した、伊達冠石(だてかんむりいし)を扱う「大蔵山スタジオ」の銀座にあるギャラリー。国内外のラグジュアリーなインテリア空間でも、一際目を引く存在感のある石は、世界中で大蔵山でしか採れません。大蔵山の土を使ったざらりとした土壁の前に、人の手が自然の美しさを掘り出したように一部磨かれた花器になった石が置かれ、その地に生えている植物が生けられていました。より本当の自然よりも”自然”を感じさせる美しい室内でみる”景色”。その静謐な美しさは、悠久の時の流れと、一瞬の季節を切り取った緊張感が感じられ、ハッとしました。


● tempo
空間のリズム、プロダクトの存在感、素材の動き
変わりゆく東京の街の知らない魅力に出会えることも




